父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集    2015・2・23記




    
子どもの健康と体力づくり





         
偏食による栄養の片寄り


 偏食は栄養がかたより、子どもの発達にさまざまな障害を与えます。発育
不良、気分不快、疲労、肩こり、かっけ、とりめ、腰痛などの原因となりま
す。
 母親は、とかく子どもの嫌がる食べ物は避け、好きな食べ物だけを与えが
ちです。母親の好き嫌いで献立を作ったり、父親のおかずはこれ、兄と弟の
おかずはこれ、妹のおかずはこれと、一人一人の好みで作ったりします。
 「学校給食で、先生が偏食を直してくれる。偏食矯正は学校にまかせてお
けばよい。せめて、家庭では好きなものを食べさせたやりたい」などと考え
て、家庭では偏食奨励をしていませんか。
 学校では食べても、家庭では偏食する子もいるようです。偏食矯正は学校
と家庭とが協力してやっていくべきものです。家庭で、あれは好き、これは
嫌いだと子どもの言いなりになってしまっては、偏食直しができませんし、
しつけのうえからもよくありません。
 今の子どもの好きな料理は、カレーライス、ハンバーグ、スパゲッティー、
ラーメンの類です。嫌いな料理は、にんじん、ほうれん草などの野菜類、魚
料理、酢の物などです。今の子どもは肉類を好み、魚嫌い、野菜嫌いの傾向
がみられます。学校給食でも、子どもの好きな献立は、カレーやハンバーグ
などで、人気のない献立は生野菜や煮物など野菜を中心にした料理です。パ
ン食には肉のおかずが合うわけで、肉のおかずの時は次々とおかわりをして
食べ残しがありません。生野菜や煮豆や魚フライの時はおかわりは少なく、
食べ残しが出るという現状です。
 子どもの食生活は欧米型になってきています。肉類を中心にした食事を続
けると血液中のコレステロールの量が増加します。コレステロールは動脈の
血管の内側の壁にこびりつき、血液がスムースに流れるのを防いでしまいま
す。これが高血圧の原因となります。また、野菜を食べないと、野菜に含ま
れているカロチン、鉄、ビタミン類が不足します。これらが不足すると視力
が低下したり、不眠、血液の酸化助長、疲れやすいなどの原因となります。


          
偏食をなくす方法


 どうしたら偏食しないで、よく食べてくれるようになるかを工夫するのも
料理を作る楽しみであり、チエの発揮しどころだと言えます。たんぱく質は
肉類だけに頼らずに、魚や大豆加工食品(とうふ、豆乳)などからもバラン
スよくとるようにします。蛋白質は、子どもの臓器、筋肉、神経の発育に必
要不可欠な栄養素であります。
 次に、家庭のおける偏食をなくす方法につて書きます。ご指導の参考にし
てください。

(1)あせらず、時間をかけて、少しずつ食べるようにさせていく。おとと
   いは一口、きのうは二口、今日は三口、あすは四口と少しずつ量を増
   やしていくようにする。初回は舌にふれるだけ、次回は舌にのせるだ
   け、というようにして慣れさせていく。

(2)ちょっとでも食べたら、褒めてやる。おおげさに褒めて、うれしい顔
   をいっぱいにして、おだてて、ペロリと食べさせてしまう。

(3)家族みんなで楽しい雰囲気で食事をする。みんなで食べれば、嫌いな
   ものでも、楽しい雰囲気で食べてしまう。子どもが嫌いなものを、親
   が「おいしい、おいしい、舌にからっまって、ころがるみたいなとこ
   ろがなんとのいえないおいしさだ。とろりとした甘さが素敵なおいし
   さだ」と言いながら、おいしそうな顔面いっぱいに表わして食べてみ
   せる。母親、父親が、おいしい、おいしいと言いながら食べる。子ど
   ももつられて食べてしまうようになる。

(4)料理方法工夫する。子どもの好む味付けをする。嫌いなものは、みじ
   ん切りにして料理する。あるか、ないか、分からない程度に細かく切
   って料理する。

(5)遊び、スポーツなど、運動でおなかをすかさせる。おなかがすいてい
   れば、嫌いなものでも食べるようになる。

(6)料理の品数を少なくし、もりつけを少なめにする。

(7)間食を与えない。おやつを少なめに与える。



       
こんなおやつは気をつけよう


 今の子どもは糖分の多い清涼飲料水、スナック菓子、甘い菓子を好んで食
べます。遠足の時にリュックサックに入れてくるのを見るに、殆どがこれら
の菓子類やジュース類です。3時のおやつの時間でも、これらの食品類や甘
いケーキ類が出されているようです。つまり、子どもが好むのは砂糖がたっ
ぷり入った食品類です。コーラ、ジュース、サイダーなどの清涼飲用水には、
1ビンに100カロリーもの砂糖が含まれています。ご飯一杯分のエネル
ギーを軽くオーバーするものもあります。清涼飲用水をとりすぎると肥満の
原因ともなります。
 澱粉を油で揚げたスナック菓子やインスタントラーメンはカロリーが十分
にありますが、蛋白質が不足し、ビタミンやカルシュームの類が殆ど入って
いません。それに塩が多く含まれているため、塩分の取り過ぎになります。
小さい頃から塩を好むようになり、塩分が味に対する好みとして一生ついて
まわるようになります。塩分の取り過ぎは、大人になってから高血圧になる
確率が高くなります。いざ減塩しようとしても小さい時からの好みの味はな
かなか矯正できません。
 子どもに糖分の多い菓子やジュースを与え過ぎないようにしましょう。糖
分が体内で代謝される時にビタミンB1が必要なので、糖分を大量に摂取す
るとビタミンB1を不足することになります。B1が不足すると、疲れ、肩
こり、消化不良、かっけになります。また、気分的にいらいらしたり、ケン
カっぱやくなったり、協調性がなくなったりします。コーラ、ジュース類に
は添加物が入っていますが、これら添加物は骨をもろくさせたり、遺伝毒性
や安全面から問題含みのものもあります。


          
子どもの歯を守る


 子どもの歯は、小学校時代に乳歯から永久歯に生えかわります。生えたば
かりの永久歯はまだ固くなく、虫歯に対する抵抗力が弱く、虫歯にかかりや
すくなっています。糖分が歯につくと、細菌によって分解され、産出された
酸によってエナメル質がおかされ、歯の有機質を溶解してしまい、こうして
虫歯になってしまいます。
 子どもにコーラ、ジュース類や糖分の多い甘い菓子を与え過ぎないように
しましょう。わが子を買い物に連れていって、子どものほしがるままに甘い
お菓子やジュースを買い与えるたり、子どもがほしがりもしないのに飲ませ
たりしていませんか。母親がわが子の虫歯作りに協力しているようなもので
す。飲んだ後は、すぐ水道水でぶくぶくとうがいをして、歯についた糖分を
追い払う習慣をつけましょう。
 飲み物は、冷えた麦茶、ジュースなら果物からの手作り、冷えた牛乳など
にします。清涼飲用水をほしがったら、コップ一杯どまりでがまんさせ、飲
み過ぎないようにします。ジュース類は、成分表示を見て、果汁の多いもの
を選んで与えるようにします。


          
おやつは手作りで


 おやつは、小さい子どもが三度の食事では足りない分を補うためのもので
す。子どもはからだをよく動かしますから、おなかをすかします。そのため
におやつがあるわけですが、与え過ぎないようにしましょう。清涼飲用水や
スナック菓子や甘いケーキなどは、出来るだけ避けるようにします。また、
三度の食事と同じようなパンやいにぎりなども避けるようにします。母親の
愛情のこもった手作りのおやつを与えるようにしましょう。

 下記は、東京新聞(1984・8・20)に掲載された投稿欄からの引用です。

     「おやつ」は愛情のあかし  
              主婦 中島志げ子 66(千葉市船橋市)

 子供にとって楽しい夏休みも、お母さん方にしてみれば何かと大変なシー
ズンでしょう。 
 特に「おやつ」には心を使うと思います。「おやつ」は成長期にある子供
たちには、大切です。愛情のあかしです。
 スナック菓子や、手作りといえばドーナッツといったイメージは捨てて、
おふくろの味を作ってあげましょう。
 牛乳や果物、野菜などをふんだんに与えたいと思います。トマトの丸かじ
り、キュウリにおみそをつけて食べさせたり、小さい煮干しはいって頭ごと
食べさせる。また、サツマイモの天ぷら、おでん、ふかしいも、トウモロコ
シなどいろいろあります。
 パンにはジャムをぬり、リンゴの皮をむき、ゆで卵をスライスした物をは
さんだり……。この程度のことは子供にやらせるのもよいでしょう。出来上
がった「おやつ」は親子で話し合いながら食べるようにすれば、愛情の交流
は抜群でしょう。



         
体力が衰えているわけ


 今の子どもは、体格はよいが、体力が衰えていると言われています。身長、
体重など体位がめざましく発達しているのに較べて、体力が衰えてきている、
と言われています。
 身長が伸びたのは、敗戦後、タタミの生活からイスの生活に変わったため
だと言われています。それだけでなく、栄養がよくなったことも原因として
あるでしょう。
 今の子どもたちは体格が伸びている一方、積極性や活力が薄れ、ねばり強
さに欠け、ひ弱な体力になったと言われています。朝会で立っていられない、
朝からあくびをする、運動すると直ぐ疲れたといってすわりこむ、転んで手
でかばう動作が鈍く、頭や顔をもろに地面にぶつけてケガをしたり、永久歯
を折ったりする、ボールが飛んできた時に手でさえぎれずに顔でボールを受
けてしまう。骨折しやすい、などが見られます。
 栄養はよいが、運動がたりない。タタミの上で正座をしなくなった。塾通
い、おけいこ事、テレビ、ゲーム器、スマホ、マンガなどのために戸外で遊
ばなくなった。家事手伝いの機会も昔の農業・林業・漁業中心の生活から較
べると著しく減少し、力仕事をする機会が殆どなくなった。だから、日本人
の身上とする手先の器用さ、敏捷さも衰えてきています。
 栄養がよくても、運動が不足している。運動しないと、骨に負担がかから
ないから、骨が弱くなり、身長だけが伸びるということになります。最近の
子どもには大人にしか罹らない成人病や高血圧や糖尿病が増えているそうで
す。これも栄養がよくなり、運動不足が原因だと言われています。


         
身体虚弱児になるわけ


 母親の過保護な心配のかけ過ぎのからだ作りはやめましょう。身体虚弱児
にしてしまうことになります。
 冬でも、男の子は半ズボン、女の子はタイツなしが普通であるのに、風邪
になるといけないからと先回りの心配をして、外がそれほど寒くないのに厚
着をさせます。学校の体育時にも、冬の体操着は長袖を着せ、長トレパンを
はかせたり、厚手のタイツをはいた上に短パンを身につけるように指示した
りします。
 風邪にかかっていないのに予防のためとマスクをさせたり、少し咳をする
と「風邪をひくといけないから何か着なさい」と命じて厚着をさせます。そ
して「外は冷たいから家の中で遊びなさい。コタツに入って本でも読んでい
なさい」と指示したりもします。
 昔は、鼻たれ小僧がたくさんいたものです。鼻の下に青汁の二本ばなを長
くたらした子どもがたくさんいました。男の子も、女の子も、こうした慢性
鼻炎にかかっている子どもがたくさんいました。昔の母親は、寒風の中で子
どもが二本ばなをたらして遊んでいても平気でした。ごく普通に見られた光
景でした。上着の袖口で二本ばなをふきとって、袖口がピカピカに光り、ゴ
ワゴワしているのが普通に見られたものです。こうして昔の子どもは、寒風
の中で自律神経を鍛え、外気浴で皮ふを鍛錬し、からだの抵抗力を強くして
いました。
 今の母親はどうでしょうか。一過性のなんでもない咳を、過保護に神経質
に対応して、風邪にかかっては大変と考え、異常な対応をしてしまいます。
少しでも咳をすると、外に出さない、暖房の部屋で過ごさせる、医師に連れ
ていく、薬剤をのませる、などの対応をします。病気に罹ることを極端に恐
れて過剰な対応をすると、逆に病気になりやすい子どもに育つことになりま
す。虚弱児に育ってしまいます。
 危険だからと、木登りを禁止したり、崖すべりを禁止したり、プロレス遊
びを禁止したり、自転車を買ってやらなかったり、木製バットを買わないで
プラスチックのバットで間に合わせたり、部屋が荒らされるのは嫌だからと、
友だちを家に連れてくるなと言ったり、こうしたことも親が身体虚弱児に育
てているのだと心得ておくべきです。

 次に、外遊びが身体によいわけを書きます。
(1)血のめぐりがよくなる。
(2)筋肉が強くなる。
(3)骨がじょうぶになる。
(4)身体が軽くなり、身体がよく動くようになる。
(5)アタマの働きがよくなる。
(6)食事がおいしくなる。
(7)よく眠れるので、翌日の勉強がよく分かる。
(8)疲れない、馬力のある身体になる。
(9)病気にかかりにくいからだになる。
【注記】
上と関連して、本章にある「遊びの効用と遊ばせ方」を参照しましょう。


     
 朝会で卒倒する子が増えている


 多くの学校で、月曜日の朝には全校朝会が行われています。朝会をしてい
ると、一過性の貧血を起こして立っていられなくなる子、目まいがして卒倒
する子、気持ちが悪くなってすわりこむ子、などがいます。この現象はかな
り以前からあります。原因は運動不足、生活リズムの乱れ、むりな登校など
に原因があるようです。次のような例が考えられます。

≪原因1、運動不足≫
 運動不足で体力がなく、直立不動の姿勢で緊張した時間を強いられると、
長い時間でないのに、青い顔になって立ちくらみをおこすようになる。貧血
を起こすわけは、日頃の運動不足で、身体を強く動かしてないので、心臓や
血管の発達が遅れ、血行が良好に循環しなくなることになる。体質的に貧血
気味の子だけでなく、通常の子でも運動不足から朝会で座り込むことになる。

≪原因2、生活リズムの乱れ≫
 夜更かし、寝不足は、心身の疲労をひきおこし、それが翌朝まで持ち越し
てしまう。目覚めが遅くなり、朝食を抜きで登校するということになる。朝
食を食べたとしてもパン一片とコーヒーで済ましてしまうことになる。生活
リズムの乱れや食事の乱れから体力がなくなり、朝会で倒れるということに
なる。

≪原因3、むりな登校≫
 風邪で熱があるのに無理して登校する。おなかをこわしているのに無理し
て登校する。病気直後でまだ完全に回復してないのに無理して登校する。こ
のように身体の調子が完全でないのに無理して登校する、こうしたときに、
朝会で立ちくらみをおこすことになる。

≪原因4、身体の変調≫
 小学校高学年の女子、中学生の女子に多くみられる事例でである。この年
齢になると、乳房の発達、月経などの性徴がみられる。子どもから大人の身
体に変化していく時期で、身体的にも精神的にも変調(動揺)が起こりやす
くなる。病院で医師から何ともないと言われているが、朝会で気分が悪くな
り、座り込むという女子が出てくる。

≪原因5、話し手の話がつまらない≫
 朝会といえば学校長が話をするのが普通ですが、学校長の話し下手が原因
で朝会で気分が悪くなる、座り込むということもある。つまらない話しをだ
らだらと続ける、子どもの興味を引かない話をだらだらと続ける、子どもた
ちに話し掛ける、問い掛ける、という話し方でなく、メリハリのない、ぼそ
ぼそした、独り言を語ってるみたいな話をだらだらと続ける。子どもたちは
直立不動の姿勢で緊張して起立していなければならない。こうしたことが原
因で倒れるということになる。特に、夏、汗が噴き出す強い日差しの中で、
詰まらない話をだらだらと続けられると、気分が悪くなり、倒れるというこ
とになる。


        
骨折する子が増えている


 転ぶとすぐ骨を折ってしまい子が増えています。昔の子どもと較べて今の
子どもは骨が弱くなっている、と言われます。これに関して専門医の意見は
こうです。「今の子どもの骨は弱くなっていない」と言います。「骨が折れ
やすい原因としてカルシューム不足が考えられるが、これは当たらない。今
の子ども達は学校給食で毎日、牛乳を飲んでいる。パン食のときだけでなく、
ご飯のときにも牛乳を飲んでいる。昔の子ども達と較べたら多すぎるくらい
にカルシュームをとっている。骨が折れやすい原因は運動不足にある」と言
います。 
 今の子ども達は、昔の子ども達と較べて運動をしていません。外で、身体
をおもいきり動かして遊ぶことが少なくなっています。下校時の子ども達の
生活は、習い事や学習塾などの過密スケジュールでいっぱいです。遊べる時
間がとれたとしても、友だちとの遊ぶ時間の調整がつかず、結局は家の中で
テレビ、まんが、ゲーム器、スマホ、本読みなど、一人静かに遊ぶというこ
とになります。
 遊び盛りに運動をしなければ、弱い骨になってしまうのは当然です。運動
しないと、筋肉が弱くなります。筋肉が弱くなると、骨や関節が弱くなりま
す。骨や関節が弱くなると、骨折しやすくなります。
 骨は、筋肉によって引っぱられることでがっちりした骨に発育します。弱
い筋肉だと骨を引っぱる力が弱くなり、やせ細った骨になってしまいます。
長期間入院して絶対安静にした患者の骨をレントゲン写真で撮影すると、そ
の骨は細くなっています。長期間入院している患者の尿を調べると、尿から
カルシュームが出ていることが分かります。
 筋肉が動かなくなると、骨に刺激がなくなり、運動に必要な部分の骨がと
けているのです。筋肉を強くするには、外で元気よく遊ばせ、運動させるこ
とが大切なことが分かります。血液の循環も活発になり、筋肉や骨、間接な
どの運動器官への血液の流れが盛んになって、筋肉や骨の成長が促進させら
れます。
 また、運動不足が原因で、今も子ども達は、反射・平衡神経がにぶくなっ
ております。危険から自分の身体を回避する安全能力が劣っていると言われ
ます。今の子ども達は、転び方が下手だ、転ぶと手が出ないで顔や頭をもろ
にぶつけてしまう、ということも言われます。運動不足から、200メートル
を全力で走ると足がもつれる、もつれて転ぶ、骨折する、という現象が見ら
れます。自分の身体を危険から守る安全能力を衰えさせてしまっています。


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