父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集    2015・2・23記




      
本好きな子にする方法
  



          
 読書の効用


 。物語には、人間・社会・自然のさまざまな姿がありありと、目に見える
ように、肌に感じられるように描かれています。物語は子供の狭い経験世界
から、広い経験世界へと拡大させてくれます。物語は、人間世界の悲しさ、
喜び、醜さ、驚き、哀れさ、好悪、善悪などを教えてくれます
 すぐれた物語を読むとき、わたしたちは登場人物たちと一体になって作品
世界の中で泣いたり、笑ったり、悩んだり、怒ったり、共に行動したり、考
えたりしています。読書しているとき、わたしたちは別な人生を登場人物た
ちと一緒になって行動しています。人間世界の新たな側面をさまざまに教え
てくれます。世の中には、いろいろな人間がいること、いろいろな感情を持
つ人間がいろいろな行動をしていることを知ります。自分の知らない世界を
知ることによって、人間世界をより深く認識したり、新しい感情を培ったり
します。
 一般に、子供の発達段階から、次のような読書傾向があると言われていま
す。
 4,5才………童話の絵本、民話の絵本、外国の童話、図鑑
 小学低学年……日本の童話、外国の童話、民話の絵本、図鑑
 小学中学年……伝記、探検、冒険、推理、民話
 小学高学年……推理、冒険、SF,少年少女小説、伝記
 中学生…………推理、冒険、SF,名作、ベストセラー

 今の子どもは、どんな作家の本を好んで読んでいるのでしょうか。くもん
子ども研究所(1994年)の調査によると、次のようになっています。
 1位……那須正幹         7位……コナンドイル
 2位……夏目漱石         8位……鳥山 明
 3位……寺村輝夫         9位……ミヒャエルエンデ
 4位……江戸川乱歩            宮沢賢治
     あまんきみこ       10位……小林深雪
     折原みと



         
本の買い与え方


 わが子が本好きになってほしいという願いはだれでも持っています。しか
し、与え方に注意しないと本嫌いになってしまうことだってあります。母親
がわが子に
「この本は、ためになる本よ。だから読みなさい」
「この本は、勉強に役立ちます。だから読みなさい」
「この本は、成績が上がるから読みなさい」
「この本は、理科(社会科)の勉強に役立つから読みなさい」
このような与え方は、すべてダメです。
 子どもは(大人も)”本はおもしろい”から読むのです。ただ文句なしに
おもしろいから読むのです。読書は勉強である、と考えると、読書は苦痛に
なってしまいます。読書嫌いになってしまいます。
 読書は遊びです。子どもにとって読書は、おもちゃで遊んだり、ゲームを
したり、ケーキを食べたりするのと同じなのです。ただ底抜けにおもしろい
から読むのです。
 読書の「おもしろさ」とは、その内容は、おかしい、こっけい、というこ
とではなく、悲しさ、哀れさ、恐ろしさ、さみしさ、つらさ、気恥ずかしさ
など喜怒哀楽の感情や、真善美の価値感情が含まれているからです。学校の
勉強に役立つから、道徳心を植え付けるのに役立つから、だから「読め、読
め」と強制しては読書嫌いになってしまいます。


         
本の紹介のしかた


 子どもが、「この本が読みたいなあ。買ってほしいなあ」と思う以前に、
親のほうが先に「わが子に本をたくさん読ませたい。本をよむことはいいこ
とだ。ためになる本だ。勉強になる本だから」といって、親が勝手に買い与
えてしまってはいけません。子どもに一度にたくさんの本を買い与えてしま
うようでもいけません。読書というのは、子どもが「この本、おもしろそう
だなあ。読みたいなあ」と思ったときに読ませるのがよいのです。読もうと
する意欲がないのに、ただたくさん買い与えても、子どもは食傷気味になり、
読書意欲が湧かないということになります。親の考えで本を押しつけては、
本好きになりません。
 親が子どもと一緒に本屋へ行って、子どもが買ってほしい、子どもが読み
たいと選択した本を与えるようにします。どの本を買うか、本の選択に、親
が口出ししないようにします。親がくだらんと思う本でも、子どもはその本
をきっかけにして、やがて多方面に読書範囲を広げていくことだってあるの
です。長い目で見守ってやってほしいです。
 アンデルセンやクオレなどの名作物だけを与えたりするのもよくありませ
ん。名作物が悪いというのではありません。親の郷愁から名作物ばかりを買
ってきて与えようとするのがよくないのです。時代は変化しています。子ど
もの興味にあった本がたくさん出版されています。名作物にこだわらずに、
子どもが読みたい本を与えるようにしましょう。
 本を選ぶのに親がいちいち口出しするのもよくありません。読書は、自分
で読みたい本を、自分で選ぶことも楽しみの一つです。子どもにお金を与え、
「本屋さんへ行って、自分で読みたい本を買っておいで」と言うだけでもよ
いのです。読書は、親に隠れて買う楽しみ、隠れて読む楽しみもあります。
おこづかいを少しずつためて、やっと本を手に入れる楽しみは何とも言えな
いものであることは、大人なら一度や二度の経験はだれにもあることでしょ
う。読書には、友だちと交換して読む楽しみもあります。友だちとの本の貸
し借りを禁止してはいけません。おおいに奨励しましょう。
 親は、マンガを敵視しがちですが、いちがいにマンガはダメということは
できません。物語マンガ、歴史マンガなどもあり、それがきっかけとなって
それに関連する書物へと広がっていきます。子どもが読んでいるマンガの内
容を見て、それの関連する本を紹介したり、一緒に本屋へ行って買ってやる
ようにしたりします。
 子どもの興味関心のある事柄は、必ず子どもはそれに関連する本は好きな
はずです。昆虫が好きな子には「昆虫図鑑」、歴史が好きな子には「歴史絵
本」「歴史マンガ」、鉄道が好きな子には鉄道に関する本を誘いかけてみた
らどうでしょう。学習マンガもぜひ勧めてみたらどうでしょう。それら本に
ついて、親もちょっと目を通して、親の感想を話して聞かせ、その本につい
て子どもと共に語り合いをしてみたらどうでしょう。


        
読書意欲のもたせ方


 子どもは自分からすすんで本を読み、本好きになるということは殆どあり
ません。親が本を読んで聞かせたから、テレビで物語やまんがを見たから、
友だちに紹介されたから、先生に紹介されたから、それがきっかけになって
本を読むようになるのが多いです。親の読み聞かせは、わが子の本好きに大
いに役立ちます。一冊の本について親と子で語り合うのもいいですね。
 小学校低学年では、親が物語を語って聞かせましょう。一冊の絵本を母子
で一緒に見ながら、その絵を共通の話題にして語り合ってみましょう。くれ
ぐれも道徳的な教訓的な徳目だけを語ることのないようにしましょう。
 お話しの世界の楽しさを、楽しい雰囲気で語って聞かせましょう。

  うわあ、楽しそうね。
  かわいそうね。
  おいしそうね。
  すごーいね。
  でっかいケーキねえ。
  こんな家に住んでみたーい
  まあ、なんてかわいいリスさんでしょう。
  この子、いけない子ね。
  一緒に応援しようよ、がんばれー、がんばれー、うさぎさーん。

このように一緒に絵本をのぞきこみながら楽しい雰囲気で語り合いましょう。
読書は、ただおもしろいから読むのです。おもしろいところを素直に声に出
して語り合ってみましょう。
 物語の導入部では、わざとオーバーにおもしろく語って聞かせ、読む楽し
さに引き込ませてやるのも一つのテクニックです。冒頭では物語世界の中へ
引き込ませることに工夫してみましょう。登場人物に読み手の気持ちを入れ
て同情してみたり、怒ってみたり、悲しんでみせたり、親と子が一緒に物語
世界に感情反応して語り合ってみるのもよいでしょう。

 うわあ、さし絵の色がきれいね。
 かわいい目に描けているね。
 いじわるそうな顔付で、お母さん、この子、きらいだわ。
 こんなヒマワリがいっぱい咲いている畑に一度でいいから行ってみたーい。
 さし絵について語り合い、さし絵の美しさに感動してみせたりします。

 親は、子どもが本を読みたくなるように演出力を発揮してみましょう。お
もしろい場面ではゲラゲラと笑ってみせましょう。本の世界に心あらざる子
どもも、きっとその本を覗きこむようになるでしょう。それをきっかけにし
て、その本の中に入っていくようになるでしょう。ある場面を、声に表情を
つけて悲しそうに表現してみせたり、笑い声にして表現してみせたり、大声
で怒って見せたり、きっと子どもは耳を傾けるようになるでしょう。まずは、
親が楽しそうに、おもしろいーという雰囲気を作って読むことです。登場人
物の行動や性格について、「あなたは、どう思う?」「おかあさんは嫌いだ
わ」などと語りかけてみましょう。話題を引き出して、子どもにも語らせて
みましょう。「お母さんは、こう思うわ」「あなたは、どう思う?」と語っ
てみましょう。


       
親も本好きの姿を見せる


 子どもを本好きにするには、親が本に親しんでいる姿を見せることです。
日常、本を読んでいる家庭の雰囲気がなければ、子どもは本をすすんで読む
ようにはならないでしょう。親子で、テレビを消して、読書する時間をもち
ましょう。
 この本はおもしろから読め、でなく、本の評判を語って聞かせましょう。
あるいは、本の内容の一部を話して聞かせましょう。親の感想意見を語って
聞かせて誘いかけるのもいいでしょう。本の内容のおもしろさを、親の顔や
声の表情に出して、わざとオーバーに語って聞かせるのもよいでしょう。
 親と子どもが、同じ本を見ながら、コトバを交わし、本を読むことのおも
しろさ、楽しさ、感動を、一緒に味わう共通の場ををもつように努めること
です。
 読み聞かせは、本好きにして読書習慣をつけるということだけでなく、語
彙を豊かにし、読みとりの力をつけ、話を聞く力をつけ、話をする力をつけ、
集中力をつけ、経験を広げるなど、いろいろな教育的効果があります。


         
語り合いのしかた


 幼稚園児、小学校の低学年・中学年の親子読書の語り合いは、親と子が対
面して行うよりは、親が子をだっこして、または並んで、または子どもの後
ろから、同じ目の位置から本を覗きこんで、子どもの耳に低くささやく声で
語ってあげるとよいでしょう。文字が読める子なら、1ページずつ親子で交
代で読むのもよいでしょう。
 「お母さん、読むのが疲れた。今度は、あなたがお母さんに読んでちょう
だい」「あら、読み方が上手ね。赤鬼さんは、どうなるのかしらね。お母さ
んは、こう思うよ。あなたは、どう思う? じゃあ、先をお母さんに聞かせ
てちょうだい」と、語り合いながら読み進めるのもよいでしょう。
 親と子が対面して読み聞かせると、どうしても堅苦しくなり、教訓的な道
徳的な読みとり内容、語り合いになりがちです。お母さんも、ご主人に貴金
属品やバッグなどを買ってほしい、買っていいかしら、と了解を得るときは、
ご主人の後ろから、ご主人の耳元で低く、ささやく甘え声で言ってみましょ
う。ご主人は即座に「いいよ、いいよ」と言ってくれるでしょう。対面して、
向かい合って、正面きっての懇願では、成功する確率はぐっと少なくなるで
しょう。


    
小学校入学以前の読み聞かせの方法


 以下は、読売新聞(2015・1・16)の「くらし・家庭」覧にあった記事で
す。小学校入学以前のお子さんに母親がどのように読み聞かせしたらよいか
について書いてありました。そこからの引用抜粋です。参考になるよい方法
です。

 堺市の市立東文化会館で開かれた読み聞かせの会。6組の親子が集まり、
絵本講師の松本真由裕美さんが語り出すと、それまでハイハイしていた赤ち
ゃんもじっと顔をもぞき込み、話しに聞き入る。
 
 松本さんはこう語る。
「子どもが集中できるのは、親の膝で安心して聞いているからです。読み聞
かせの会では対面(向かい合う)して行うことになるが、家庭でわが子に読
み聞かせる時は、母親の膝にのせるか、親子で横に並んで、膝と膝とが接す
るように座って読むといいです。」

「子どもが安心できる環境ならば、声の大きさやリズムを気にする必要はな
い。親子で会話しながら、途中でやめても、好きなページだけ読んでもい
い。」

「同じ本ばかり読んで欲しがる子も多い。それは関心が高まってる証である。
好きな本を読んだあとに、ママの好きな本も読もうね、と誘いかけると、読
書の幅が広がっていく。」

「きょうだいに読み聞かせする時は、先ず、下の子向けの絵本から読むとよ
い。上の子も、易しい絵本はおもしろがって聞く。先の上の子向けの本を読
むと、下の子が飽きてしまい、両方に読み聞かせができなくなる。」

 では、読み聞かせには、どんな本を選べばよいか。子どもの本にくわしい
大阪樟蔭女子大学講師の神村朋佳さんは、こう語る。

0〜1歳
「0〜1歳は、話しの筋よりも、音と色を楽しむ。この時期は、話す・聞く、
というやりとりの間合いを経験することが重要です。「がるまさんが」(か
がくいひろし作、ボロンズ社)や「ごろごろにゃーん」(長新太作、福音館
書店)ノのように、表題の言葉を繰り返したり、リズミカルに読んだりしな
がらページをめくる作品がいい。関心を示さない時は無理せず、ほかの作品
に切り替えるようにする。」

2〜4歳
「0〜1歳は、旅立ち→課題発生→乗り越え→帰ってくる、など、話しの筋
の構成がしっかりしていて、結末が安心できる作品がいい。たとえば、「ち
いさなねこ」(石井桃子作、横内巽絵、福音館書店)は、部屋を抜け出した
子猫が、街で繰り広げる冒険と成長を描いている作品である。」

5歳以上
「一人で読める5歳以上になっても、読み聞かせを続けた方が、読書体験が
より豊かに広がっていく。この時期は、新しい事柄を知る喜びがあり、新し
いことへの関心の幅や知的好奇心が増すので、そうした本を選ぶといい。」

「親自身が読んで、はっとさせられたり、心がうんと動かされた本を選ぶと、
やっぱり子どもも喜ぶことが多いですよ。」


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