父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集 2015・2・23記 家庭勉強のさせ方 家庭と学校の役割の違い 家庭教育というと、母親の中には、子どもを机に向かわせて勉強させるこ とだと考えている人がいませんか。家庭教育とは、子どもが家の中で国語や 算数の勉強をしたり復習予習をしたり、学習塾や進学塾に行って勉強したり することだと考えている人がいます。 教育熱心とは、子どもを学習塾に行かせたり、家庭教師をつけたり、英語 や習字を習わせたり、柔道や剣道やバレエやピアノを習わせたりすることだ と考えている人がいます。遊ぶひまがあったら、塾へいけ、おけいこ事ヘ行 け、と言います。これは「教育ママ」というより「狂育ママ」と呼んだ方が いいのではないでしょうか。 なぜなら、家庭教育の本体からはずれているからです。あるべき家庭教育 の仕事が忘れられているからです。家庭は学校教育の延長・補充の場ではあ りません。家庭は学校の下請け機関ではありません。 。家庭教育と学校教育とを混同しています。家庭と学校とは教育的役割が ちがうのです。役割の違いをはっきりと知りましょう。 家庭教育は、家庭生活そのものが学習の場です。本来の家庭教育は、しつ けの教育です。家庭教育とは、日常の基本的な生活習慣や行動様式を行うた めのしつけの教育です。人間として、個人として、社会生活を営んでいく上 で必要な基本的行動様式、マナーを身につける「しつけの教育」です。学校 教育の補充としての家庭勉強は、家庭教育のごく小さな一部分でしかありま せん。 受験教育のひずみ 今の受験教育のひずみが、家庭教育と学校教育との内容を混同させていま す。学校で学習すべきものを家庭で親が熱心にやらざるを得なくしておりま す。これが家庭教育の貧困化を招くことにもなります。残念な教育現象(現 実)にあります。親たちの一部は進学塾(予備校)に期待し、現在の学校教 育にあまり期待していないという現実も一部あります。 受験教育が家庭教育や学校教育にさまざまなひずみをもたらしています。 最近は、進学教育を受けられるのは富裕層の家庭だけという教育格差がマス メディアなどで社会問題として取りあげられています。 ひずみの第一は、しつけの教育が軽視され、知育が偏重されてることです。 親はわが子を勉強、勉強と追いたてることになります。遊ぶひまがあったら 勉強せよ、お手伝いはしなくてよい、テレビばかり見てないで勉強せよ、と 追いたてます。 こうして子どもたちの運動能力の低下、身辺処理能力の低下、自立的な行 動力の低下、創造的な遊びや制作活動能力の低下などを招いており、事態は かなり深刻化しています。遊びたい盛りの時期に机にしばりつけられ、勉強 へ追い立てられる現状は、うれうべきことです。 ひずみの第二は、知育の教育を家庭(進学塾)で行い、しつけの教育を学 校に頼むというおかしな現象がみられます。受験には学校で学習している内 容よりも高レベルな問題が出題される、受験競争に勝つためには進学塾へ行 かせて受験のための特別授業を受けさせ、受験のための学力を身につけさせ なければならない、ということになっています。親は、家庭で勉強、勉強と 強要してしまうことになっています。 しつけを教師に頼む母親 母親が担任教師にこう言います。 「先生、うちの亮太は、わたしの言うことをちっとも聞いてくれません。困 っています。朝、六時半には布団から出る約束をしているのに、いつも七時 半頃に起きてきます。朝食を食べて、時間割を揃えるのがやっとです。歯も 磨かず、顔も洗わないで登校します。夜は、早く寝なさいと口やかましく注 意しても、ぐずぐずして、いつも十時半頃まで起きています。わたしが言っ てもだめですから、先生から厳しく教えてやってください。先生の言うこと はよく守るので、先生から指導してやってください。それに、先生、亮太は 偏食がひどいんです。給食のときには残してませんか。残した時には厳しく 注意してください。お願いします」 この母親は、家庭でしつけるべき内容を、学校は親代わりになってしつけ てくれるものだと考えているようです。家庭内のしつけの指導は親がすべき ものでしょう。 これは学校教育の領域だ、家庭教育の領域だ、と双方が縄張り争いをし合 ってもはじまりません。子どもがよく成長するためには、学校と家庭が協力 して指導していくべきです。しつけの教育は、本来は親ががんばって指導す べきですが、教師も協力できることは一緒になって指導していくように支援 することはできます。 ただし、家庭における子どもの悪さをすべて学校教師に頼られてはかない ません。先の母親の教師への訴えの例では、口やかましく注意(小言)する 母親の姿がみられます。父親が指導している姿が出てきません。父親の存在 が感じられません。どうしたのでしょうか。父親は、母親をサポートする役 目があるのです。母親は父親に協力を求めましょう。母と父で十分に話し合 い、一致協力してわが子の指導に当たるようにしましょう。 この母親は、わが子のしつけに気を配って、心配しています。わが子の学 業成績には大いに気にするが、わが子のしつけについては気にしない母親が いますが、この母親はわが子に家庭におけるしつけ指導に気を使っていると ころが偉いです。成績さえよろしければ、しつけはどうでもよい、という考 え方の親もいます。この母親はその点ですばらしい母親だと言えます。 母親は、わが子をお腹の中に妊ったとき、出生時には、五体満足にと念じ たはずです。健康第一、身体剛健、世の中に出て他人に後ろ指さ指されない 立派な行動ができる人間であってほしい、と願ったはずです。「這えば立て、 立てば歩め」が親心だと言われますが、子どもが学校へ行くようになり、子 どもの顔さえ見れば勉強、勉強と繰り返し、しつけ指導はどうでもよいとな ると大きな問題です。 家庭勉強の内容とは 家庭には、学校でできない指導すべきしつけ内容があります。しつけ指導 は、家庭でしか指導できない内容です。 例えば次のような内容です。あなたの家庭の実態はどうでしょうか。 次の文頭にある□の中に一つずつチェックをいれながら、お読みください。 □わが子と一緒に、目玉焼き作り、チャーハン作り、クッキー作り、カレー ライス作りなどして、楽しんでいる。 □子どもが学校から帰ると、「手を洗って、うがいをしなさい。今日は宿題 はないの。4時になったら塾へ行くのよ。」でなく、「きょうは楽しそう ね。何があったの。お母さんもこんな楽しいことがあったのよ。話して聞 かせるね」「きょうはどうしたの、元気がないじゃないの」と、子どもの 顔色を見て、気持ちをくみとりながら、母と子の会話を楽しむ。 □近所の子どもたちを家に呼んで遊ぶことを奨励している。子ども達がわが 家で生き生きと遊び、大騒ぎしているのをほほえんで見ていられる。 □わが子は、家事の手伝いをすすんで実行している。母親が急な病気で寝込 んでも、母親の簡単な指示だけで、子どもがちゃんと自分で家事ができる。 □家族同士の挨拶コトバがごく自然に交わされている。お早う。行ってきま す。行ってらっしゃい。ただいま。いただきます。ごちそうさま。おやす みなさい。など。 □家族同士が、気軽に、即座に、「ごめんなさい」「ありがとう」を言って いる。 □我が子は、食欲旺盛、発育よく育っている。 □我が子は、子供の遊び集団の中で、うちとけて、好かれて、気兼ねなく、 仲よく、元気に、遊ぶことができる。 □よく眠る子、床の中でぐずぐずしてない。ぐっすりと寝てパッとさわやか に目覚め、いつのきまった時刻に就寝、起床できている。 □毎日、親の言われなくても、歯みがき、洗顔をしている。 □遊び道具、勉強道具、本やマンガ本、衣服など、整理整頓ができている。 □おこづかいを上手に計画を立てて使っている。むだな使い方をしない。 □我が子は、一日の生活時間を計画を立てて自律的に行動できている。 □家族全員がそろって朝食や夕食ができるように、できるだけ時間のやりく りをつけて食べるようにしている。 □家族全員がそろって、楽しい団らんの機会をもつように家族行事を計画し、 実行している。遠足、ハイキング、旅行、バーベキュー・パーティー、食 事会、観劇会など。 □(「身につけたい子ども作法」に家庭勉強として学ぶ個別のマナー・作法 の例が書いてあります。) 宿題のやらせ方 母親が三人、こんな立ち話しをしていました。 「おたくの良太ちゃんは、テストのお点がよくて、うらやましいわ。うちの 子は、お点がぜんぜんダメなのよ。どうしたらよいか。困ってますわ。」 「ええ、良太の担任の先生は、宿題を毎日のように出してくれます。宿題を 出してくれるから、仕方なしに、毎日、勉強しています。美香ちゃんの担 任の先生は宿題を出してくださらないんですか。」 「はい、美香の担任の先生は宿題を出さない主義なんですって。宿題がない から、家ではぜんぜん勉強しないんです。宿題を出さない先生ってダメ ね。」 「美智子さんの先生は、どうなの。」 「美智子の先生も、宿題を出してくれないわ。宿題がないから、毎日、遊び 呆けているわ。先生のお会いしたとき、宿題を出してくれるようにお願い しようかしら。」 母親は、「子どもに勉強のくせをつけるために宿題を出してほしい。机に 向かうくせをつけるために宿題を出してほしい。そうでないと、家庭で勉強 しないから。」と言っています。 しかし、宿題を出すと、ほんとうに勉強するくせがつくでしょうか。勉強 するくせをつけるとは、子どもが自分から進んで、喜んで勉強する、机に向 かう、ということです、この習慣ができていることです。宿題の強制で自学 する習慣がつくでしょうか。宿題をやっていかないと、先生に叱られる、宿 題忘れのバツグラフが多くなる、だから、しかたなく、義務感から、子ども はやるだけです。 強要を長く続けても、子どもは勉強好きにならないと思います。勉強とは 嫌なもの、嫌いなものと考えてしまいます。自分から進んでやる勉強の態度 や習慣が身につくはずがありません。 でも、と母親は言うでしょう。誰だって勉強なんて好きでないですよ。先 生だって、子供の時は、そうでしたでしょ。遊びの方が大すきだったでしょ う、と言うでしょう。当たらずと雖も遠からず、です。 参考資料 下記は、読売新聞(2014・7・30)の投書欄「気流」に掲載されていた記事 です。 自発的な学習促す 教師の手助け大切 元学校長 米田 豊 89 (兵庫県西宮市) 小学校の教師をしていたある時、宿題を出さないことにしました。担任を している子どもたちには「家庭学習を自分で進んで行い、そのノートを翌日 の朝に出しなさい」と話しました。名付けて「がんばりノート」。私はノー トを毎日点検し、赤ペンで励ましの言葉を書き入れ、子どもたちに返しまし た。 夜中の12時頃まで勉強する子や、夏休み中のノートが60冊になった子 もいました。ノートの提出回数・内容と、学力は比例していると、自信を持 って指導していました。自ら進んで学ぶ習慣をつけるため、手助けをしてあ げることが大事だと信じています。 勉強好きにさせるコツ 勉強のくせをつけるには、強制でなく、自分から進んで勉強したくなる方 法を工夫することです。勉強とは本来、やればやるほど張り合いがあって、 こんなにおもしろく楽しいものは他にないものなのです。勉強を好きにさせ るコツ、それは「デキル、デキル。デキタゾ、デキタゾ。バンザーイ」とい う喜びの感情、成功感や成就感を感じさせることです。 最初は、低水準の易しい問題を与えます。デキルヨロコビを味わわせてや りましょう。うれしがらせましょう。母親も一緒になって喜び、たくさん称 賛の言葉を与えてやりましょう。「あなたはアタマがいい子ね。できたじゃ ないの。すばらしい子ね。勉強するって楽しいことでしょう。おもしろいね。 もっと勉強してみようよ。今度は、この問題をやってみようよ。ほら、デキ タ、デキタ。あなたって、ほんとにアタマがいい子ね、と、おおげさに、わ ざとおだてて、褒めてやりましょう。 勉強好きにさせるコツは、目標・目当てを持たせることです。自分は今こ んなことに興味がある、これを調べよう、それに関する本を読んでみよう。 自分は今、遅れている勉強すべき内容はこれだ。これを練習(調べる)すれ ばよいのだ。こうした自分で学習すべき課題が分かっていること、自覚して いることです。 子ども自身が次のような計画・目標を自分で意識して持つことです。その 課題を遂行しようと努力しようと自覚することです。 ○作文力をつけるために毎日、少しでもよいから日記をつけよう ○毎日、算数の問題集を2ページずつ行おう。 ○大化改新というテーマについて書いてある事柄を本で調べて、まとめよう ○月、2冊の物語の本を読むことにしよう。 ○鉄道の趣味を生かし、調べたことを模造紙にまとめてみよう。 ○1週間以内で、ハーモニカ(リコーダー)のA曲が吹けるようにしよう。 こうした目標を自覚して持つようにしましょう。他人から与えられたもの でなく、自分で決めて、自分に宿題を課するようにするのです。 こうすれば、自分から進んで勉強するようになります。目標作りは子ども の意見を尊重しながら、親子で相談して決めましょう。計画にそって実行し ているか、親は経過を見ながら、励ましのコトバをかけてやったり、側面か ら応援してやりましょう。計画通りに実行していたら、よい評価を与え、大 いに称賛してやりましょう。おおげさに褒めて、さらに続けるように励まし のコトバをかけてやるようにしましょう。 今日はこういう勉強をしたね。こういうことができるようになったね。す ごいわね。ずいぶん、ていねいに書いているね、だから間違わなかったのね。 次はコレの勉強になるね。明日はコレをがんばろう、今日はコレで終わりね。 短時間で間違わないでできたね、すばらしいわ、と、よい評価を与えて、明 日も目標に向かってがんばろう、という気持ちと努力目標を与えて、励まし てやります。 次にコレをやらなくちゃ、という目標を持たせることが大切です。自分自 身に宿題を課すことができたら、しめたものです。最終目標はコレだという ものを持たせ、それをめざすようにします。勉強嫌いの子は、最終目標 (ゴール)を持ってない子どもです。めざす努力目標が分かってることが大 切です。 勉強は楽しい遊びの一種である 計画していた勉強内容が早く終了したら、そこで打ちきって遊びに行かせ ましょう。計画した時間通りに終了しなければ、時間を延長して頑張るよう に励ましてやりましょう。子どもにとって、勉強も遊びの一種でしかありま せん。母親は、勉強も遊びだと考えて、わが子と一緒に遊び楽しむつもりで 勉強していくのが、勉強好きにさせるコツです。そうすれば子どもは勉強を 自分から進んで、喜んでするようになっていくでしょう。勉強は遊びです。 楽しいものなのです。勉強は、やればやるほど楽しく、おもしろいものなの です。 できれば、教師からの宿題は、子ども一人ひとりに違った内容の宿題を出 してもらうのもいいですね。個性に応じた宿題は大いに奨励できます。 A児は作文力がないので、または作文が好きなので、日記を書いたり、毎 日の出来事に感想をつけた文章を書いて提出させる(宿題)を与える。 B児には二位数と二位数の掛け算の計算がまだ不完全なので、そのドリル 問題を数個与える(宿題)をだす。 C児には、文字・漢字が乱雑だから、字形をきちんと整えて書く硬筆練習 を毎日、五個程度与える(宿題)をだす。 D児には、たて笛が上手なので、高度な練習曲を与えて挑戦させ、できた ら、全児童の前で披露させる。 E児には、趣味が歴史なので、教師が大判用紙を与えて、調べたことをそ れにまとめて、全員の前で発表させる宿題を出すなどです。 このように一人一人の特性に応じた宿題を出すことはとてもいいです。 ダメな母親のコトバかけ例 ダメな母親のコトバかけは、こうです。 ○「百点をとってえらいわ。百点が8枚になったら新しい自転車を買ってあ げるからね。がんばって百点をとるように勉強するのよ」 ○「隣りの太郎君は、いつも90点以上をとってくるそうよ。太郎君はアタ マがいいし、それに体育もできるし、それに較べて、あなたは落ちこぼ れで困った子ね」 ○「なんですか、この点数は。学校で何を習ってるの。給食を食べに行って るの。遊んでばかりいるからよ。ちっとも勉強しないんだから」 「明日から、学習塾へ行きなさい」 ○「お母さん、この問題のときかた、教えて」 「いま、忙しいのよ。あとにして」 「明日、学校の先生に質問してね。塾の先生に質問してみて。そのための せんせいなのよ。分からないところは、どしどし先生に質問するといい わ」 「参考書があるでしょ。それで調べるといいわ」 ○「一体、誰のための勉強なの。自分からは少しも勉強しないんだから。あ なたのためよ。自分の勉強は自分から進んでやりなさい」 ○「こんな悪いテストの点数だなんて、お母さん、恥ずかしいわ。授業参観 に堂々と行けないわ。こんな簡単な問題が分からになんて、ほんとにあ なたってアタマが悪い子ね。忘れ物は多いし、落ち着きはないし、ノー トの字は乱暴だし、ほんとのダメな子ね」 この母親は、テストの成績結果だけをみてガミガミと怒ったり、お金でつ ったりして勉強させようとしています。テストの結果のでき、ふできだけで 対応されては、子どもは立つ瀬がありません。これは母親のコトバの暴力で す。子どもは委縮し、ますます学習意欲をなくすだけです。ますます勉強嫌 いにするコトバかけです。 よい母親のコトバかけ例 よい母親が子どもにいう言葉かけは、こうです。 ○「お母さんも、ここが分からないのよ。どうやったら調べられるかね。」 「それについた書いてある本、家のどこにあるかしら。お姉ちゃんの部屋 にないかしら。一緒に探してみようよ。」 ○「わかるところだけ、言ってごらん。なるほど、そこまで分かってれば、 答えは出てると同じよ。半分以上、あたっているわ。こう考えれば、完 成よ。」 ○「あっ、そうか。お母さん、わかってきたよ。ここの45を3人だから、 3で分ければいいんじゃないの。あなたは、どう思う?」 ○「やっぱり、だめか。これについて書いてある教科書のところを読んでみ ようよ。ドリル問題集にも解き方が書いてあるんじゃないの。一緒に調 べてみようよ」 ○「なぜ、まちがえたのか、一緒に調べてみよう。最初から、やりなおして みよう。ここが間違っていたのね。こうしていけばよかったんだ。じゃ、 練習問題をやってみよう」 ○「うーん、なかなか難しい問題だぞ。昔は、こんな問題は習わなかったぞ。 学習辞典を持ってきて調べてみよう」 ○「この問題は簡単よ。こうすればいいのよ。簡単でしょ。」 ○「太郎ちゃん。太郎ちゃんの教科書とノートを見せてね。あら、おもしろ い内容の勉強をしているのね。お母さんも勉強したことあるわ。でも、 お母さん、忘れてしまったわ。太郎ちゃん。あなたが先生になって、こ のやり方をお母さんに教えてちょうだい。」 「この問題は、簡単だよ。こうすればいいんだよ」 「太郎ちゃん、アタマがいいのね。教え方が上手だわ。お母さん、よく分 かったわ」 ○「お母さんも、この問題、わからないなあ。どうやったら調べられるかな あ。調べ方を考えてみようよ」 」 この母親は、子どもと一緒に楽しみながら勉強しようとしています。子ど ものレベルまで下りて、子どものレベルから出発しようとしています。教え てやる、でなく、一緒に楽しみながら勉強しようとしています。 この母親のように、通知表の成績がどうこう言うのでなく、子ども目線か ら、学習内容に一緒に身を乗り出して考え始めています。 学習過程を重視しています。子どもがどんな思考の筋道をとっらよいを語 り合っています。なぜ間違えたのか、なぜそう考えたのか、どこでつまずい ているのか、その筋道を親子で一緒に探っています。親子が一緒になって楽 しみつつ、子どもの勉強をみてやっています、教えてやっています。子ども と一緒になって楽しく勉強し合う、遊びのつもりで語り合っています。こう した対応が、賢い母親です。 母親は解答がわかっていても、子どもの目線から、子どもの思考の同行者 となって、一緒に考え合うようにします。すぐに答えを教えないで、考え方 や筋道をさぐりながら語り合っていくようにします。気短かに、声高に、ガ ミガミと叱りつけて結果(答え)だけを教え込むのでなく、答えに出し方、 考え方、途中の考え方を一緒に語り合うようにします。 数学者ユークリッドのコトバ 昔、ギリシャの数学者ユークリッドが、エジプトの王様に数学を教えるこ とになりました。王様は、ユークリッドに質問しました。 「もっと、てっとり早く数学が身につく方法はないのか」 ユークリッドは答えました。 「はい、王様。学問に王道はございません」 学問に王道(楽な方法、近道)はないのです。毎日、コツコツと努力を積 み重ねて勉強していく人が王者です。時間をかけて、少しずつ、じっくりと、 努力を積み上げていく人が王者なのです。毎日、少しずつ努力を続けるか、 続けないかが、別れ道です。 最初は簡単な問題から始め、しだいに水準を上げた問題を与えていくよう にします。少しの量でいいのです、毎日、続けていくことです。量を多くし て、あせりすぎた計画を立てると、途中で疲れて、やがて勉強嫌い、ヤーメ ター、という結果になります。 継続は実力を生む、です。余裕のある、むりのない計画を立てて、毎日、 少しずつ継続していくことが成功の秘訣です。 勉強のまとめは、しっかりとやりましょう。母親が、正答になっているか どうか、点検しましょう。赤鉛筆で○×をつけてやりましょう。 ○の場合は、母親は笑顔で褒めて、デキタ、デキタ、とからだごとで喜び の表情を表してみましょう。 ×の場合でも、ここまでできた、すごい、あす、がんばればいいのよ。と 励まします。ちょっとは、残念さ、無念さをからだで表わしてがっかりして もよいでしょう。どこがどう間違っているかを親子で一緒に探って、これは ほんのちょっとしたケアレスミス(軽率な、うかつな、不注意な誤り)だっ たね、ちょっとした考え違いでほんとに残念だったわ、あわてないで、ゆっ くりと考えると、きっとできていたはずよ、ちょっとした軽い間違いだった わね、と激励してやります。 各教科の知識獲得だけが勉強ではない 俗にいう社会勉強も大切な勉強だ 父母は、「勉強」というと国語、算数、理科、社会などの知識獲得だけを 考えがちです。家庭勉強といえば漢字練習、音読練習、分数の計算練習、聖 徳太子の業績調べ、天体の惑星調べなどを考えがちです。 「勉強」には、もう一つ、とっても重要な「勉強」があります。俗にいう 「社会勉強」です。学校という集団生活の中で、家に帰ってからの友だちと の遊び(集団行動)の中で、どう善き行動をしていけばよいか、自分がどう 役割行動を果たしていけばよいか、人と人との善き関係をどう築いていけば よいか、こうした重要な勉強があります。 小学校低・中学年生では、これらを余り意識していませんが、高学年や中 学生・高校生になると、人間関係を円滑に築いていくにはどう行動すればよ いか、これらに強い反省的な意識を持ちながら行動していくようになります。 これらに不適応状態が起こると、不登校や非行行動となって現れ出るよう になります。 下記は、中学生、高校生の新聞への投稿記事からの引用です。彼らが部活 動という集団行動の中で大切な勉強(経験)をしている、各教科の知識獲得 の勉強でない大切な勉強をしている、と語っています。 参考資料(1) 下記は、毎日新聞(2015・2・19)投書欄「みんなの広場」に掲載されて いた記事です。 学校は人間関係を学ぶ場 中学生 岩田七海 15 (東大阪市) 私は人間関係は学校でしか学べないと思います。学校では国語や数学など の教科を学びますが、それは一人でも学べます。人間関係はそうではありま せん。 人と意見が合わずにけんかすることがあります。しかし、それも人間を成 長させる一つの機会ではないでしょうか。違う考えを持つ人と人の衝突が起 きるから、どこがいけなかったのかと考えて行動することができます。それ をくり返すことによって、人間関係の築き方が自然とわかってくるのだと思 います。 さらに他人と接することで我慢することを覚えます。それは自分の気持ち をコントロールできるということです。もし、世の中の大人がこのようなこ とをできなかったら、どうなりますか。きっと社会は成り立たないでしょう。 だから学校は普通の勉強だけでなく、人間関係や精神的なことを学ぶ場で あると考えます。社会で生きていくうえで必要なものの大半を学べる場。そ れが学校であると思います。 参考資料(2) 毎日新聞(2015・2・27)投書欄「みんなの広場」に掲載されていた記事で す。 先輩の存在は大きかった 中学生 大石優夏 14 (東京都町田市) 私は最近、先輩の存在がなくてはならないものだと感じています。 「先輩といっても、ただ一つ、二つ上の、偉そうにしているだけの人たち でしょ」と、中学1年の頃は思っていました。何をしたって怒られるし、怖 いし、といつも思いながら部活動をしてきました。でも、3年生の引退の時 期が近づいてくると、今までとは逆に「もっと先輩と一緒に部活したい」と 思うようになりました。「怒られる」が「怒ってくれた」へ。「怖い」が 「怖くしてくれた」へ。嫌だなと思っていたことが感謝と思い出へと変わっ てきました。 あのとき、私語が多かったから怒ってくれたんだ、自分の気が引き締まっ たのって、先輩が怖くしてくれたからだ、などと、私の今の生活や思い出に は、先輩が深く関わっていたのです。部活や大会、学校生活でも、先輩の存 在は大きかったんだなと思いました。卒業式を前にして、これから、そんな 先輩たちとも会えなくなることが、とても悲しいです。 参考資料(3) 下記は、毎日新聞(2015・3・15)投書欄「みんなの広場」に掲載されて いた記事です。 お世話になった先輩たち 中学生 相場真子 14(東京都文京区) 3月になった。入学、卒業という言葉を耳にする機会が増えてきた。 私が一番感慨深いのが、3年生の先輩が卒業してしまうことだ。部活動で お世話になった先輩方にそう感じることが多い。私は、バスケットボール部 に所属している。今は部長として活動しているものの、入部したての、まだ 右も左もわからに私に、さまざまなことを教えてくれたのは一つ上の先輩方 だった。バスケの技術面はもちろん、体育館での準備、先生方やコーチへの 礼儀など、社会にでた時にも必要なことまで手取り足取り教えてくれた。廊 下で会った時はいつも笑顔で声をかけてくれた。そんな先輩方がもうすぐ卒 業してしまう。感謝の気持ちをしっかり伝えるために、気持ちのこもった色 紙を贈ろうと思う。そして、先輩から直接教わった「礼儀」で、先輩方に感 謝の意をきちんと表そうと心から思った。 参考資料(4) 下記は、毎日新聞(2014・12・1)投書欄「みんなの広場」に掲載されて いた記事です。 部活で礼儀や感謝の心を学んだ 中学生 渡辺真歩 12 (東京都立川市) 私は卓球部に入っています。卓球部では、卓球が上手になるだけでなく、 あいさつや礼儀、感謝の心など、人間が生きていく上で大切なことをたくさ ん学べます。 私は、卓球部に入り、前よりあいさつや返事が良くできるようになったと 思います。また、人が何かやってくれたら感謝の気持ちを込めて「ありがと うございます」と言えるようにもなりました。今、生きていることにとても 感謝しています。学校に通って、勉強できることに感謝しています。 普段やっていることは当たり前だと思われますが、今日、生きていられる ことも奇跡だと思うようになりました。私たちのように中学生になれず、亡 くなってしまった人もたくさんいます。今日生きていられるのは、当たり前 ではないのです。 命を大切にする。命に感謝することができるようになりました。卓球部で 多くのことを学びたいです。 参考資料(5) 下記は、毎日新聞(2014・7・29)投書欄「みんなの広場」に掲載されて いた記事です。 自分で壁を作らないで 高校生 枝光比菜乃 18 (北九州市戸畑区) 私は1学期をもってインターアクト部を引退した。部名だけではなかなか 理解してもらえないが、地域でのボランテア活動を中心にする部活だ。昔か ら自分から積極的に人と関わることが苦手で、そんな自分を変えようと人の かかわりが強いこの部活を選んだ。 入部当時は、なかなかうまくコミュニケーションをとることができず、戸 惑いもあった。しかし活動を重ねるなかで勇気を出して話しかけてみると、 地域の方々はとても優しく話を返してくれた。このことで、人と話す楽しさ を知り、また部活がとても楽しいものとなった。 昔の私と同じように人と関わる自信がなく、恐怖心を持っている人に私は 伝えたい。 人見知りなんて性格は存在しない。ただ、人見知りという言葉にすがって 自分で壁を作っているだけだ。 勇気を出して自分から積極的に心を開けば、きっと相手も応えてくれる。 私はこの部活からそうしたことを教えてもらった。 このページのトップへ戻る |
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