音読授業を創る そのA面とB面と         2011・05・06記



  
分読(役割音読、群読)授業の取り入れ方



音読と黙読

  文章を声に出して読むことを一般に「音読」と言います。「視読」と呼
ぶ人もいます。これに対して、文章を黙って読むことを一般に「黙読」と言
います。「目読」と書いて「もくどく」と読ませる人もいます。

個読と分読
  「音読」を大別すると二種類があります。「個読」と「分読」です。
「個読」とは、一人の人が声に出して文章を読むことです。「個人読み」と
か「個人読」とか「単独読み」とか「ひとり読み」とか呼ぶこともあります。
  これに対して「分読」とは、文章を、二人以上で、読み分坦個所を区分
けし自分の個所だけ声に出して読むことです。二人で、三人で、四人で、し
だいに増えて、多人数で、または全員で、自分の読み分担個所だけを読むこ
とです。「分担読み」とも呼ぶこともあります。

役割音読
  学校現場では、「分読」が用いられる場面は、「役割音読」と「群読」
とがあります。
 「役割音読」とは、物語文の会話文を、登場人物別で配役を決め、自分の
配役部分だけを分担して登場人物が対話してるように進むことです。物語文
には会話文の連続する個所が多くあります。連続する会話文を「役割音読」
すると、会話場面がありありと臨場感あふれて声に現れ出るようになります。
語っている人物の気持ちがありありと浮かび出します。演劇における舞台稽
古の立ち読みに似た音声表現と言えましょう。対話部分を一人で読むよりは
役割音読した方がずっと場面の理解が分かりやすくなり、楽しく国語学習が
できます。
  「役割音読」には、児童同士の分担読みだけでなく、教師と児童による
掛け合いの分担読みもあります。教師も登場人物の一人を受け持って児童た
ちと一緒になって読み進めるわけです。「役割音読」すると、場面の様子が
ありありと表出され、現場に立ち会っているような場面作りとなり、聞き手
(聴衆)にも分かりやすく伝わるようになります。
  教育現場で「役割音読」が多く使用されるのは、物語文における連続す
る会話文個所でしょう。物語文で、AとBとCの三人物が対話している連続
する会話文個所があったとします。その三人の対話個所を、一人の人が三人
全部を音読するのでなく、三人の配役の分担を決めて、それぞれの人物の配
役の読み手が分担して会話文だけを音声表現していきます。
  役割音読には、会話文だけでなく、地の文を読むナレーター役を入れる
こともできます。連続する会話文個所の前後の地の文を、一人の読み手(ま
たは集団)がナレーター役となって、その場面の対話・語り合いを解説して
いくナレーション役・説明役となって地の文個所だけを読み進めていきます。
児童たちはけっこう役割音読が好きで、楽しく国語学習ができます。

群読
  「分読」の中には「群読」もあります。「群読」には、いろいろな定義
があります。荒木は「一人ないし複数の人数をとりまぜて読み、表現効果を
高める音声表現のしかた」(拙著『群読指導入門』一光社)と定義していま
す。一人ないし複数の人数で、つまり集団の読み声の声量を違えて、声に出
して音声表現することです。
  前以て、どの文章個所を、何人で読むか、群読台本を作っておきます。
文章のどの個所を、一人で、二人で、三人で、四人で、……、グループで、
全員で読む、などの群読台本を作っておきます。一つの作品を集団音声で立
体的に音声表現していくわけです。

群読の音声表現の仕方
  群読の音声表現の仕方は、だれか一人の声を基準に、全員がそれに合わ
せて、その声で一つに統一することではありません。誰かの声に合わせるこ
とではありません。群読は、ひとり一人が自分の解釈で声に出して読み、そ
れが合わさったにすぎない集団読みです。比喩的に言えば、一つに合わせる
「斉唱」でなく、一人一人の持ち味を組み合わせて調和的創造をしていく
「合唱」の読み声です。とはいっても、自分の好き勝手な音声表現でよいと
いうわけではありません。
  グループ内ですぐれた音声表現をしている友達の声を耳にすれば、それ
に引きずられる、それに合わせていくことは当然にあるべきで、グループ員
の協調協力で最良の作品世界を作り上げていく、そうした読み声に調和し表
現できるようします。全員で集団創造していくことが求められているのです。
  役割音読は、連続する会話文だけの分担読みが多く用いられます。一方
の群読では地の文をも分担読みしていきます。地の文を、人数を違えた配当
で分担読みの台本づくりをします。会話文を分担読みすることはもちろん、
地の文をも集団音声で人数を違えて分担読みしていくのです。地の文も分担
読みで音声表現していくと、読み分担の人数の量変化で地の文の音声表現が
立体的になり、全体がステレオ感が増し、ダイナミックに、重量感のある
ハーモニーが生まれようになります。
  群読指導では、すぐれた集団音声を求めて、納得できなければ何回も繰
り返して練習していくようにします。学級児童たちの集団音声による表情づ
けで作品世界を共同製作していくことになり、協調性や自主性が育ち、連帯
感や一体感や成就感が生まれるという教育的効果があります。何度も繰り返
し練習していくことで、やっと納得できる音声表現に完成したという達成感
の喜びは大きなものがあります。また、「群読」は、個人読みとは違って、
「横断歩道、みんなで渡れば怖くない」の心境がどこかにあり、気楽に、心
安く、強度の緊張感もなく、みんなで声に出して楽しく読み進めることがで
きるという利点もあります。

説明文の「分読」(群読、役割音読)の方法
 説明文の「分読」つまり「役割音読」「群読」は、これまで学校教育では
全然といってよいほど指導されていません。今後の研究課題となっています。
説明文にも分読指導はできるし、説明文指導に分読を取り入れると、児童の
説明文の読解能力の向上に大きな効果を発揮することうけあいです。
  ということから、説明文の読解能力を高める分読指導の実際の幾つかを
下記で提案することにします。
 説明文には、次のような文章個所がよくあります。こうした文章個所は、
掛け合いによる分読(分担読み、役割音読)に適しています。こうした文章
個所で、教師が分読(分担読み、役割音読)のアイデアを出して台本を作っ
て読解指導に役立てていきます。

1、「問題文」と「答えの文」の分担読み。
2、「リード文」と「第一に」と「第二に」と「第三に」と「第四に」、
   などの分担読み。
3、「リード文」と「はじめに」と「つぎに」と「それから」と「そし
   て」と「さいごに」と「このように」などの分担読み。
4、「理由個所」と「結論個所」の分担読み。
5、「抽象個所」と「具体個所・具体例」の分担読み。
  「原因」と「結果」、「事実」と「意見」の分担読み。
6、「データ個所」と「まとめ個所」の、分担読み。
7、「例示個所・たとえば」と「まとめ個所」の分担読み。
8、「論証個所」と「要約・整理・まとめの個所」の分担読み。
9、 頭括型文型で分かれる個所の分担読み。
10、双括型文型で分かれる個所の分担読み。
11、尾括型文型で分かれる個所の分担読み。
12、「論証個所」と「筆者の主張・結論の個所」の分担読み。

役割音読や群読を取り入れると子どもは喜ぶ。
  子どもは、役割音読や群読が好きです。がぜん、のってきます。
  教師は、上記した文章個所が説明文に出現したら、一人読み、グループ
読み、読み分担に人数変化をつけた台本を作ります。その場で即席の指示で
もよいです。読み人数に変化もつけるをつけると群読になります。読み声が
立体的になり、ステレオ化して、またハーモニーも生まれます。意味内容が
強調され、イメージも増幅され、聞き手に分かりやすく伝わるようになりま
す。
  高学年になったら、児童たちにも台本作りに参加させてみましょう。低
学年はばだむりです。文章内容が声に出てくること、声による内容出現に満
ちることにねらいを置きます。みんなで共同創作していくことで協調性や自
主性が育ち、連帯感や達成感の喜びを共有することができます。仮の台本が
出来たら、実際に声に出して読み、テープに録音し、その読み声を全員であ
れこれ合評しながら共同修正を繰り返し、完成台本を作っていきます。児童
同士の分担読みだけでなく、教師と児童の掛け合いの分担読みもいれると児
童は喜びます。

  説明文の分読(分担読み、役割音読)個所については上記したが、同じ
ことになってしまうが、物語も入れて少し変えて書くと次のようになります。

1、会話文→地の文。
  これが物語で最も多く使われている役割音読です。会話文だけを子ども
  同士で役割音読する。教師が地の文だけを読む、全員が地の文を読む。
  役を交代して聞き比べ批評し合う指導など。
2、問題文→答えの文。問題提示文→解答部分。問い→答え。
3、リード文→第一に→第二に→第三に
4、リード文→はじめに→つぎに→それから→さいごに→このように
5、理由個所→結論個所。
6、抽象個所→具体個所。
7、データ個所→まとめ個所。
8、例示個所(たとえば)→まとめ個所
9、論証個所→要約個所・整理まとめ個所。
10、文型頭括型で分かれる個所
11、文型双括型で分かれる個所
12、文型尾括型で分かれる個所
13、論証個所→自己の主張個所

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